養殖生産履歴情報開示検討事業

事業の目的

養殖魚は一定の品質と安定供給に貢献しています。安全・安心な養殖魚を消費者に提供す るためには生産者が次のような養殖生産履歴を正確に残し、養殖生産履歴情報を販売先と消費者に積極的に開示することが重要になってきています。

  • 誰が生産したか
  • どのような薬品を使用したか
  • どのよう餌を与えたか
  • どのような環境で養殖したか
  • いつ出荷したか

本事業では、養殖魚の生産者のために次の項目を検討しています。

  • 生産者自身が養殖現場で作業内容の記録項目の種類
  • 出荷するとき、製品に添付する情報の種類
  • 消費者や販売先に公開する項目

養殖生産履歴情報を記録するために、生産者の手間やコストの増大に結びつかないように という視点で、魚種毎に科学的に説明可能な最低限のいくつかの基準を示し、生産者や漁業協同組合の規模や能力・意欲に応じた選択肢も提示します。

生産者あるいは漁業協同組合から出荷するときに養殖魚の履歴をデータベースに登録し、 その一部を出荷先や消費者に開示するシステムをモデル地域で開発しています。これらのシステムは他の地域や魚種へ拡張できるように考慮されています。

事業での技術開発内容

  1. 共通検討項目(委員会における検討)
    1. 先進事例調査
    2. 魚種別統一仕様の検討
      • 飼育管理基準
      • 商品出荷基準
      • 生産履歴情報システム(生産管理システム、情報開示システム)
    3. システム導入ガイドライン作成
    4. 検証システムの検討(自己検証・第3者検証)
    5. 導入効果の検討と普及・啓発
  2. 地域での開発項目(現地検討会で詳細検討)
    1. 地域仕様の検討
    2. システムの開発,実証試験、運用

事業実施期間

平成15年度~平成19年度

研究体制

  1. 養殖生産履歴情報検討委員会
    1. 座長:舞田助教授(東京海洋大学)
    2. 委員:学識経験者・関連団体
      • 水産総合研究センター
      • 大日本水産会
      • 全国漁業協同組合連合会
      • 全国海水養魚協会
      • 全国養鰻漁業協同組合連合会
      • 量販店(チェーンストア協会)
      • 消費者団体(首都圏コープ事業連合)
  2. 対象魚種

    ウナギ、マダイ、ブリ

活動状況

  1. 生産者が記録する帳票の種類

    以下の表に生産者が記録すべき帳票の種類を示しています。他機関で検討された表を準用したり、新たに制定を検討しています。出荷判定基準(検討中)に従って帳票類をチェックし、合格すると出荷可能になります。

    No 記録目的 帳票名 記録単位 規格作成機関
    環境 薬品 生産 場所 帳票 記入
    1 投薬記録 養殖池 通年 大日本水産会
    2 水産用医薬品管理簿 生産者 通年 大日本水産会
    3 飼育管理記録 養殖池 大日本水産会
    4 養殖日誌 生産者 本事業
    5 養殖池管理簿 生産者 通年 本事業
    6 養殖魚在庫推移表 生産者 漁協単位
    7 出荷作業記録 養殖池 出荷 本事業
    8 海域の環境検査 漁協
    9 魚体の安全検査 養殖池 出荷 出荷
    10 養殖履歴書 養殖池 出荷 出荷 全国海水養魚協会
  2. 生産者が記録する項目の種類

    全魚種を視野にいれて、生産者が記録する項目の種類と記録時期を検討しています。

    分類 項目の種類
    生産者情報 生産者(氏名、住所、連絡先等)
    養殖場の規模(番号、大きさ、構造、沈殿槽の有無等)
    網(種類(1)、塗布薬品の種類等)
    購入記録 稚魚(購入日、購入先、購入量、大きさ、由来(国内、輸入)
    稚魚(医薬品使用状況・使用時期と薬品名等)
    餌飼料(種類(2)、購入日、購入先、製品名、購入量、ロット番号、使用期限等)
    医薬品(成分名、購入日、購入先、製品名、購入量、ロット番号、使用期限等)
    疾病記録 疾病名、病気対処方法(投薬、薬浴、経口の別)
    医薬品の使用記録(使用日、医薬品名、使用量:生け簀/池別等)
    休薬期間(最終使用日から出荷日までの日数)
    ワクチン投与(薬品名、使用日、使用量:生け簀/池別)
    作業記録 給餌量(使用量、配合方法):生け簀/池別
    飼育環境(水温、DO、pH、アンモニア、亜硝酸等)
    網替(網の種類、使用した網染剤)
    分養記録 分養記録(生け簀/池の番号、分養日、尾数、大きさ等)
    出荷記録 生け簀番号、出荷作業開始終了日時、出荷作業開始終了時の温度、出荷尾数、大きさ、放養密度
    検査記録 残留薬物簡易検査(生け簀番号、検査日、検査機関、対象薬品、検査結果、文書番号、検査手法等)
    残留薬物詳細検査(生け簀番号、検査日、検査機関、対象薬品、検査結果、文書番号、検査手法等)
    水質検査(海域・地域、検査日、検査機関、対象、検査結果、文書番号、検査手法等)
    (注)
    • (1)網の種類:金網、化繊の別
    • (2)餌の種類:DP、EP、モイスト、生餌
  3. 養殖日誌

    養殖日誌(案)

    月 日(  )    天候(    )                9時気温(  ℃)

    イケス番号 水温 ℃ DO % 斃死数 配合餌 kg 生餌 kg 作業内容 薬剤 特記事項
    合計